たかり稼業西成区の北に飛田新地という地名を持つ町がある。知る人ぞ知る風俗の町・・・・ 明治に火災で焼け落ちた遊郭、難波新地の代替地として、大正7年 に誕生した昔の名でいう赤線地帯だ。 昭和33年の売春防止法の施行以降は、その遊郭の全ては料亭と名 を変え営業することになった。 そしてこの町は今もなお、風俗として全国からの男性客を迎え入れ ている。 料亭の数、140軒。働く女性の数およそ300人 ここで働く女性たちは明治時代のように人身売買で売られてくるわ けではないが、当然何らかの理由があってこの場所で働いている。 「あかんわ・・今日も3本しかあがらんかった・・」 源氏名をかなちゃんというこの女性・・・年齢は48歳。 店では歳を8歳ごまかして40歳ということで働いている。 無理があるといえば無理があるが、サービスはいいということで なじみの客も多いらしい。 この女性が言っていた「3本しかあがらんかった」というのは、 売上が3万円しかなかったということだ。 そのうちの半分が彼女の取り分となる。 12時を過ぎるといつも居酒屋にやってきて一杯やって帰るのが 日課だ・・・ 彼女は若いころ、九州で温泉芸者をやっていて、一年前にこの町に 流れてきた 推定月収は40万円。一人の女性が暮らすには充分な稼ぎのように 思えるが彼女には借金があり、決して楽といえる状況ではない。 借金の金額は100万ほどとたいしたことはないが、なんせ西成の 闇金からの借金、10日で10万円の利息を払っていかなければい けない。 さてこのかなちゃん・・どうしてそんな借金を作ってしまったのか ・・・・ 答えは男。 この町で働く女性にはある種の男性たちが群がる、 寂しい女性に寄生しようとする最低の輩たちだ。 かなちゃんはもうその男とは別れたが、いまだに借金は消えない 男たちは最初は客として通い、羽振りのいい話をする。 女性が「もしかするとこの人といれば店でも持たしてくれるかも」 と思い、気を許し、部屋にあげたときから態度は急変する。 不渡りを出しただの借金の保証人になっただのといってなきついて くるというのが決まったパターンだ・・ 風俗で働く女性のほとんどは人から必要とされることに飢えている おねがい・・・となきつけば80パーセントの女性はお金を出す というしくみだ。 貢げば貢ぐほどそれは自分の生きがいとなり、自分が必要とされな くなることへの恐怖が沸き起こる。 気が付いたときには借金まで作ってしまう。 かなちゃんはもう48歳、必要とされなくなることが何よりも怖か ったにちがいない。 もうこれ以上取れないとわかったら男は次の女へと鞍替えをする。 自分が好き好んで出した金・・・文句を言うことすら出来ない。 飛田新地で働く女性は、お金を残さない人がほとんどだ。 かなちゃんのように男に貢ぐもの、ブランドを買いあさるもの、 整形手術にはまって何百万とつぎ込むもの、パチンコにはまるもの ほとんどの人間が何らかの依存症を抱えている。 寂しさがその引き金・・・ 彼女たちは特別ではない。 自分が必要とされていないんじゃないかと思ったとき、 人は冷静な気持ちを失い、その寂しさを何かで埋めようとする そこに大きな落とし穴が待っていることに気づかずに・・・・ |